カリフォルニア研修旅行
 これは勝沼ワイン協会により2001年2月7日〜2月13日に実施されたカリフォルニア研修旅行でのワイナリー見学をまとめたものです。通訳の日本語ではなく、案内担当者の英語から文章を起こしたものですので、誤訳等がある場合はご容赦下さい。
 当資料の性質上、無断での転載はご遠慮下さい。
マーカム
 このワイナリーは1874年から創業しています。120年前ですので、日本でもこの頃から勝沼でワイン造りが始まっていると思います。当時この辺りでは今のようなプレミアムワインではなく、ヨーロッパから来た移民が日常飲むためのジョグワインを造っていました。  ここのワイナリーはフランスのボルドーから移住したジョン・ローランという人が起こしました。ゴールドラッシュの時期にやってきたヨーロッパ系の移民はブドウ畑を造り、多くのワイナリーを創りました。セント・ヘレナという地区はナパの中でも歴史があり、ここから南に道1本隔てたところにあるチャールズ・クルッグ・ワイナリーも古く、ベリンジャーも1800年代半ばから始まっています。グレイストン・レストランも元はクリスチャン・ブラザーズというワイナリーでしたが、そこも1800年代後半に創業したワイナリーです。
 ここの建物もエンブレムにあるとおり、1879年に建てられました。74年にワイナリーを起こし、ワイン造りが巧くいったので、山から石を刳りだしてきて蔵を建てました。この建物はセント・ヘレナの中でも4番目に古く、現在でも使われている石の蔵はそれほど多くありません。中は改造し樽の貯蔵庫として、現在でも使われています。
 このワイナリーは持ち主が不明な時期もありましたが、1976年にグルス・マーカムというオーナーが買い、その当時からマーカムという名前になりました。1987年にはメルシャンが買い取っています。その当時は石の蔵と木造の古い建物しかなく、年間生産量も2万ケースほどのワイナリーでしたので、設備投資を兼ねてワイナリーを一新しました。敷地面積で2倍ぐらいに増え、3カ所で200エーカー(80ha)持っていた自社畑の改植も同時に行いました。現在ではもう一カ所増やし、全部で300エーカー(120ha)持っています。
 マーカムはオープンド・パブリックという、一般に公開しているワイナリーの1つですが、テイスティングは有料で行っています。以前は無料でテイスティングさせるワイナリーも多かったのですが、最近では多くのワイナリーが有料にしています。マーカムでは赤が4種類で5ドル、白が4種類で3ドルの料金をいただいています。特別なワインを求めているお客さんの場合は、単一のバラエティーを指定していただき、無料でテイスティングしていただきます。ワイナリー内の見学については事前に電話予約のあったグループだけを案内しています。ナパでは一定の時間を決めてお客さんを案内しているワイナリーや一般のお客さんを入れないワイナリーもあります。ナパには250件近くのワイナリーがありますが、その内100件以上は生産量の少ない小さなワイナリーですので、一般公開をしていないところが多いです。
 ナパ郡の条例や規則は、ワイナリーが無作為にお客さんを呼ぶことを規制しています。29号線に新しいワイナリーを創っても、ワイナリーの駐車場の確保や建物の通りからの距離、看板の大きさなど、条件がかなり細かく決まっており、新しくワイナリーを創ってもテイスティングルームを設置できないところもあります。特にここから南にかけては、週末になるとお客さんが多くなるので、そのような制約はたくさんあります。
 マーカムにはテイスティングルームの売り上げから逆算すると年間大体20万人位のお客さんが来ています。ナパでは年間300万人程です。ギャラリーには、地元のアーティストと契約して、年に4回ほど作品展をしています。ですから3カ月ごとにいろいろな分野の作品を展示することで、お客さんに何度も足を運んでもらう工夫をしています。
 ここはストーンセラーと呼んでいる石でできた樽庫です。外から見たとおり、石の厚さは当時のまま使用しています。ここは多少の地震がありますので、改修工事の際に鉄骨を入れて補強をしてあります。温度管理のための空調設備や加湿器もあり、常に湿度が80%以上になるように管理しています。センサーで湿度が下がったところで作動し、霧が出るようになっています。この樽の中には2000年の赤ワインが入っています。1つのパレットで樽が4個乗り、それをフォークリフトで6段積みにしています。
 樽はフレンチオークとアメリカンオークを取り混ぜて使っています。また、単一のメーカーから買うのではなく、14〜15社の樽を使っています。マーカムが持っている樽の総数は8,000樽ぐらいで生産量は年間14万ケースです。樽に入れているワインは各畑別、生産者別に最終ブレンドの直前まで分けています。中にはハブブレンドなどを行う場合もありますが、原則的には畑の区画ごとにロッドを分けて管理をし、最終ブレンドの段階でマスターブレンドを造るという手法をとっています。ロッドの区別をするために樽に小さなステッカーを貼り、何年産のどの品種で何処の畑のものという区別をしています。 樽熟の期間はメルローが14カ月、カベルネやシラーが23カ月ぐらいです。1つの樽は大体7年間使います。アメリカンオークとフレンチオークの比率は半々が理想的なのですが、アメリカでもフレンチオークの価格は高いので6:4くらいで使用しています。アメリカンオークでも産地が細かく分かれ、昔と比べると質も進歩しています。
 マーカムでは白の品種としてソービニオン・ブランとシャルドネを造っています。また、ソービニオン・ブランにブレンドするためのセミヨンとソービニオン・ブスケも造っています。赤ではメルローとカベルネ・ソービニオン、ジンファンデル、プティ・シラーの4品種を製品用として造っています。そしてブレンド用としてカベルネ・フランも造っています。また、昨年から試験的にピノ・ノワールも造っていますが、まだ製品にはなっていません。 シャルドネは樽醗酵をしていますが、醗酵期間中の温度管理をしやすいように、シャルドネの区画だけ別の部屋に入れています。部屋のエアコンを管理することで醗酵温度を管理しています。醗酵温度は10℃です。醗酵終了後は澱引きせず、シュール・リーの状態で貯蔵します。4割のロッドにMLF菌を添加して、乳酸醗酵を起こさせます。ちなみに、ソービニオン・ブランは樽での熟成は行いますが、醗酵はステンレスタンクで行います。 樽醗酵の新樽の割合は大体3割ぐらいです。1つの区画を全部新樽にするのではなく、それぞれの区画の何割に新樽を振り分けるということでバランスをとっています。また、シャルドネではレギュラークラスのワインとその1つ上のリザーブというクラスのワインの2つを造っており、リザーブのワインは新樽それぞれをテイスティングして、樽を選んでブレンドしています。目注ぎ(補填、トッピング)の際には樽の乗ったパレットをフォークリフトで平置きにして、そこで同じ区画の樽から分注していき、目注ぎを行います。その際同時にバドナージュをかけます。電動式のモーターでかき回す方法です。また、必要に応じて亜硫酸などの増添も行います。目注ぎの期間の理想は6週間ですが、作業が忙しくなると8週間になる場合もあります。シャルドネの樽熟成は6〜8カ月くらいです。
 樽の洗浄には樽を自動的に洗う機械を使います。機械の上にフォークリフトでパレットのまま寝かせて樽を下に向けると、ノズルが樽の中に入り、自動的に温水または冷水で洗ってくれます。この機械では2〜3分で4個の樽を洗うことができます。ここには樽庫が3個ありますが、ここだけでは置ききれないので、外部の施設を2カ所借りています。そこには1,500〜2,000樽ぐらい置いてあります。それらの樽は、バルクワインと同じようにタンカーで運び、現地で樽分けを行います。
オークタンクは小さなもので2,500ガロン(9,500リッター)、大きなものでは7,000ガロン(27,000リッター)です。オークタンクはソービニオン・ブランやセミオンのようなあまり樽香を付けたくない品種の熟成に用います。これらのワインはステンレスタンクで醗酵し、オークタンクで熟成します。現在は熟成が終わりましたので空の状態で、3月のビン詰めのために、ワインをステンレスタンクに移し、澱下げの作業に入るところです。
 赤の場合は、タンクの上をパイプが通っており、そこからモロミが送られてきます。ロッドごとに、その都度バルブを切り替えて各タンクに落とし込みます。赤の醗酵では温度制御をしませんので、1週間程で醗酵が終わります。ポンピングオーバーを午前と午後の2回行います。下から液を抜き、それを上のマンホールからタンク内に振りかけることで、キャップを中に落とし込むという作業です。作業時間は大きいもので25分間、小さいものでは10分間です。作業の頻度はその都度テイスティングによって決めています。
 白は除梗、破砕してからプレス(圧搾)します。昨年から試験的にシャルドネの一部で無除梗でプレスしていますが、基本的には除梗破砕をしてからプレスをします。ディボルバージュを2日かけて、清澄後にタンクに移し、乾燥酵母で醗酵させます。赤は除梗破砕後そのままタンクに移し、低温処理をかけ、酵母を添加して醗酵させます。酵母は、白はプリースト・ムース(EC1118)、赤はプリミエ・キュゼを主に使っています。試験的に品種との相性に合わせて、他の酵母を小さなタンクで試すこともあります。
赤の場合は1週間〜10日間のスキンコンタクトの後にプレスします。他のワイナリーと比べると早い方で、長いところでは30日間ぐらいスキンコンタクトをします。マーカムはフレッシュでフルーティーなタイプの赤ワイン、あまりタンニンのきつくないタイプの赤ワインを造っていますので、プレスまでの行程が他の所より若干早くなっています。プレスの時のカス出しは、ベルトコンベアーなどがありませんので、バケットをマンホールの下に持っていき、人力でカスを掻き出して、プレス機まで送っています。中に人が入りますので安全管理はかなり厳しく、上のマンホールに扇風機をつけて中に空気を送り込み、中に入る人も酸素計で中の濃度を確認し、ハーベス(安全ひも)を付け、必ず外に誰かを立ち会わせてから中に入るようにしています。記録としても誰が何時に入って、誰が立ち会い、何時に出たかを記録するようになっています。
 このタンクには2000年に収穫した赤ワインが入っていますが、これからフィルトレーション(ケイソウ土濾過)をかけて、樽に移すところです。また、9,000ガロンのタンクにはソービニオン・ブランのマスターブレンドが既に入っています。これからタンパクの試験、つまりベントナイトの澱下げ試験をします。使用量を決定した後、タンクの中にベントナイトを入れて、冷却をかけてタンパクを落とし、濾過をして、瓶詰めをします。
 ステンレスタンクは全部で74本あります。サイズもいろいろあり、小さなもので200ガロン(8,000l)大きなもので9,000ガロン(35キロリッター)の容量です。ソービニオン・ブランやセミオンはジャケットのサーモスタットで冷却し、10℃で醗酵させます。ですから醗酵期間が3週間から4週間かかります。
 カリフォルニアの法律では、補糖は禁止されていますが、補酸は認められています。収穫後の糖度は通常で23°ぐらいです。収穫が遅れた場合には24°になり、できるワインのアルコールも14%になります。カリフォルニアは14%を越えると酒税が変わってきますので、24°以上のブドウはなるべく引き取らないようにしています。赤でも23°を目標に収穫していますが、昨年や一昨年など暑くなった時には26°のブドウが入ってきて、とても困りました。補酸には酒石酸を使用します。製品にする直前に補酸する場合は、テイスティングにより酒石酸かリンゴ酸かを決めます。除酸をすることはなく、pHを落とすために酒石酸や酒石酸パウダーで調整するケースもあります。特に赤ワインの場合はpHが高すぎると樽での熟成中に悪くなる可能性がありますので、樽に入れる前のpHには特に注意しています。収穫では糖度を目標に収穫します。カリフォルニアは暖かいので酸が落ちる傾向にあり、総酸は大体4.5〜5g/lで、酸が高くて困るということはありません。
 こちらが原料の処理場です。クレーンの下にあるのがホッパーで、トラックで入ってきたブドウをそこに落とし込み、スクリューコンベアーで除梗破砕機の方に送ります。大きい規模ですが、システム的には日本のものと同じです。梗はそのままベルトコンベアーでコンテナに落とされます。マーカムではプレス機としてブーハーを2機使っており、大きさは12トンと24トンです。プレスした後の皮は梗と一緒にリサイクルの業者が回収し、堆肥にして畑に戻されます。
 ワイナリーの設備として廃水処理のための大きな池があります。ワイナリーで使った水はそのまま流すことはできませんので、浄水処理し、基準をクリアーした状態で農業用水として戻します。
 ナパ・ヴァレーは、北のはずれのセント・ヘレナ山から南はサン・フランシスコ湾の縁まで南北で50キロで、東西は狭いところで5キロぐらいです。西にある山や丘と東にある森の間がいわゆるナパ・ヴァレーのヴァレーフロアーと呼ばれている部分で、ナパのプレミアムワインはここで造られています。ナパは狭いエリアですが、ウィンクラーの気候区分でいうと3つないし4つの気候区分に分かれています。南のカーネロスという場所はリジョン1になります。ずっと上がってきてモンダヴィのある辺り、つまりオークヴィルの辺りはリジョン2になります。この辺、セント・ヘレナはリジョン3になり、北のはずれ、あるいは山の向こう側のポートヴァレーにいきますと、リジョン4に近い気候になります。ですからフランスのバラエティーでいうと、南のはずれでブルゴーニュ系のピノ・ノワールやシャルドネ、ナパの真中の辺りはボルドー系のカベルネやメルロー、北の方にずっと上がってくるとカベルネも他にローヌ系の品種であるシラーやカリフォルニア固有のジンファンデルなどが植え分けられています。
畑の灌水はドリップ・イリゲーションです。カリフォルニアでは4月から10月はほとんど雨が降りません。ですからブドウを育てるために灌水が必要です。ブドウの下30cmぐらいのところに黒いビニールのパイプが通っていますが、ブドウの株の根本にだけ水が落ちるようになっています。なかにはスプリンクラーで水を撒いている所もありますが、どちらかというと遅霜除けです。春先に芽が出た後に零下になると、新芽が全部やられてしまいますので、霜よけにスプリンクラーを設置しています。スプリンクラー以外で霜をよける方法としては、ウィンド・ファン(扇風機)があります。これで空気を撹拌して、冷気がブドウの芽の辺りに溜まらないようにします。 今の季節の作業はプルーニング(剪定)です。基本的には垣根仕立てのところが多いのですが、カリフォルニア本来のカリフォルニア・スプロール・ヘッド・トレイニングというネギ坊主のような仕立て方もあります。 垣根仕立てでもダブルで出すのか、4本で出すのか、まっすぐ上に立てるのか、途中までしかワイヤーがなくて先はダランと下に降ろすのかなど、仕立て方は千差万別です。それは完全に生産者やワイナリーの考え方次第で、ナパ・ヴァレーだから全部垣根だという区分けはありません。ですから、同じ区画でも右と左の畑で仕立てが違うということがよくあります。
 ナパでも区画が違うと条件は異なります。霧が入ってくる位置が違ったり、晴れる時も最後まで残って、霧が溜まっている所もあります。土に関しても、西側の土は痩せており、逆に東側は黒土の肥沃な土地で、両方の土が雨で流されて中に入ってきます。そのためさまざまな土が混ざっており、それが畑によって品質が大きく違う理由の1つにもなっています。基本的にはここには川が流れており、川の堆積した土が元になっています。下は深さ1.5mのところにクレーバンという粘土の層がありますので、ボルドーのように根が下に3mも4mも伸びるということはありません。
 年による品質は、フランスほどの大きな差がなく、いわゆるビッグ・ヴィンテージとバッド・ヴィンテージの大きな差はありません。その年によって、フルーツが優先するのか、膨らみやボディーが優先するのかという多少の違いはあり、最近では97年の赤ワインはボディーのある力強いワインです。また、ワイナリーによって造り方が異なりますので、ワイナリーが違えばヴィンテージの善し悪しも変わってきます。
 カリフォルニアで今一番問題になっているのは、ピアス病(Pierce Disease)という病気です。これにかかると道管が詰まり、木が枯れてしまうという病気です。夏場になると新梢の先の方が次第に萎れてきて、結局その年はその新梢から収穫できなくなります。1つの木がまるまるやられるのではなく、虫が媒介となりバクテリアを接種するので、虫に吸われた所から先がだんだん弱って萎れていきます。ひどくなるとその次の年も新梢が伸びなくなり、その木の収穫量は半分や3分の1になってしまいます。以前はバクテリアを媒介する虫は小さな虫で、飛翔距離もそれほど広くなかったのですが、最近では体長1cm〜1.2cmくらいの大きな虫が病気を媒介するようになりました。その虫は1日に何10キロも飛びますので、飛んでこないようにモニターします。カリフォルニア大学デイビス校では効果的な殺虫剤や病気に対する農薬の研究を行っている最中で、そういった研究には国や州、ワイナリーの基金からの補助があります。また、その情報はシンポジウムなどでフィードバックされます。
 ここの畑では短梢栽培です。ブドウはメルローで、樹齢は10年くらいです。夏場には雨が降りませんので、灌水を週に1〜2回に減らせば、生長が止まり、摘芯をする必要がなくなります。この黒っぽい土壌は粘土が混ざっていますので、水捌けはあまりよくありません。ワイヤーは途中までしかなく、それ以上に伸びた分はだらんと下に垂らします。消毒の回数も日本に比べると少なく、主にウドン粉病の防除には春先からイオウ系の薬剤を撒きます。他にもボトリティフといった防除をします。収穫は全部手摘みで行います。
 これがボトリングラインです。ビンに窒素を充填させて、フィラーを通してワインを入れ、コルクを入れます。キャップシールは2人の女性が手でかけます。それを絞め上げて、ラベルを貼り、検ビンしながら箱に入れます。パレットに積む作業もパレッターがないので、3人ぐらいの男性が交互に積み上げています。ビン詰め後は共同倉庫に移し、そこから出荷しています。
 従業員はワイナリー全部で25人ぐらいです。製造課は10人ぐらいで、ビン詰めの時には10人ほど臨時で雇います。ビン詰めは朝8時から夕方4時半まで稼働し、2,800ケース、3万本ぐらいの能力があります。ちなみにマーカムの製造課は10人いますが、5人が実の兄弟で3人が親戚です。彼らが仕事を仕切っているので、チームワークも良く、10年間マーカムが巧くいっている要素になっています。セラーマスターも現地の社長もグルス・マーカム氏が雇った従業員で勤続20年になります。新しい従業員でも勤続10年以上がほとんどです。カリフォルニアでは人の出入りが多い傾向にありますが、マーカムではキーパーソンが長く残っており、それが成功の要素となっています。
 ここは樽の貯蔵庫なのですが、パーティーやイベントなどにも使っています。テイスティングは白がソービニオン・ブランとシャルドネ、シャルドネ・リザーブ、甘口のデザートワインです。赤はメルロー、ジンファンデル、カベルネ、メルロー・リザーブです。
 ソービニオン・ブランは18%くらいセミオンが入っています。このワインは酒石酸で補酸しています。シャルドネは100%シャルドネです。メルローは85%がメルローで、後はカベルネ・ソービニオンとカベルネ・フランが入っています。
 カリフォルニアでは75%以上でブドウ品種名をラベルにできます。年号の場合は95%以上です。ですから5%は目注ぎなどの時に別のヴィンテージを使えるということです。アペラシオンは85%ですので、ナパ・ヴァレーと表示できるのはナパ産のブドウを85%以上使用しているワインです。
ジンファンデルはカリフォルニア固有の品種ということで評価が上がっています。昔はブラッシュなどの甘めのタイプの傾向があったのですが、最近は本格的な赤ワインの傾向に変わっています。ジンファンデルは荒いブドウですのでアメリカンオークの割合が高くなっています。

 

ロバート・モンダヴィ
ロバート・モンダヴィがこの土地を購入して、ワイナリーを始めたのは1966年です。ロバートの歴史は兄のピーターとチャールズ・クルッグで働くことから始まります。ロバートがプレミアムワインを造りたかったのに対し、ピーターは商売としてジョグワインを造ろうという考えでした。結局意見の相違により、ロバートはピーターに追い出され、彼は52才で職を失うことになりました。 しかし、ロバートは前向きな性格だったので、それが良い結果をもたらしました。 最初は誰も信じてくれませんでしたが、彼はここカリフォルニアでもプレミアムワインが造れると信じ、1966年に新しいワイナリーを造りました。今でこそ700万ケースを世界中に出荷していますが、当時は年間生産量が2万5,000ケースぐらいのとても小さなワイナリーでした。彼と彼のファミリーはワイン造りを始めた1966年以降、常にどうしたらより良いワインが造れるのだろうかと考え続け、ワイン造りを行ってきました。1966年にワイナリーが創られたのは禁酒法解禁後初めてのことで、当初からステンレスタンクとフレンチオークを使っていました。  私達はチリやオーストラリアなどのワイナリーともパートナーシップを結んでいますが、それは単なる業務提携だけが目的ではなく、他のワイナリーではどのようなブドウを造り、どんなワインをどう造っているのかを学ぶのが目的です。それがロバートや彼の息子ティムの哲学であり、そういうわけで外国のワインメーカーや消費者の方にも、こちらのブドウ造りや醸造過程を観ていただいて、お互いに情報の交換をしています。
 ここからブドウ畑が見えますが、ここはナパ・ヴァレーのオークヴィルという町です。私達は3つのブドウ畑を持っていますが、畑はここオークヴィルとサンパブロ湾にあるカーネロス、そしてコースト・ヴァレーのスタッグス・リープにあります。畑の場所というのはとても重要なことです。ティムはワインメーカーというよりもブドウ栽培家で、何処の畑にどのブドウが適しているかをよく知っている方です。私達は良いブドウがなければ良いワインを造ることができませんので、今までブドウ栽培に対する技術を育ててきました。限られた土地を最大限に生かし、できるだけ化学薬品を使わず、手作業で良いブドウを造るようにしています。ワイン醸造では昔の文化を大切にしつつも、新しい技術を取り入れるようにしています。 ワイナリーを始めた1966年当初、畑は11エーカーでしたが、現在はナパ・ヴァレーに1,500エーカー(700ha)の畑を持っています。このオークヴィルの畑にはプレミアムワインとなるカベルネ・ソービニオンが植えられています。カーネロスではシャルドネとピノ・ノワール、メルローを造っています。ここから丘を1つ越えたスタッグス・リープではカベルネ・ソービニオンとソービニオン・ブランを造っています。 ワイナリーを訪れた方にブドウ畑から観てもらいたいと思い、畑の中に歩道を創りました。 また、ブドウの違いを観ていただくために色々な品種を植えています。私達の畑では、菜の花や麦類を畑の中に植えて土を豊にするという、カバークロップ(草生栽培)をしています。草生を行うことで、土壌が雨で流出するのを防ぐこともできますし、土にカルシウムなどの栄養素をもたらす効果もあります。25年前は化学肥料なども使っていましたが、今では自然の土を使って良いブドウを育てるようにしています。私達はお金と手間をかけても、そういった努力を惜しまないという方針なのですが、カリフォルニア全体でも同じ傾向になってきています。
 現在建築中のため観ていただけませんが、この建物の中はオーパス・ワンと同じような重力を利用したワイナリーのシステムになっています。こちらの方には56個のフレンス製のオークタンクがあります。 私は1977年からこちらで働いていますが、常に新しい取り組みと接しながら仕事させていただいております。ロバート・モンダヴィ一家はブドウ栽培やワイン醸造を観るためによく世界中を旅行しています。なぜならば私達が今やっていることがほとんど正しい方法だと感じても、完全に満足しないからです。私達は毎年より良いワインを造り続けることができると信じています。 ロバート・モンダヴィの従業員はカリフォルニア全体で900人ぐらいです。このワイナリーでは200人ぐらい、3つの畑のスタッフはフルタイマーでそれぞれ20人ぐらいで、収穫時期には季節労働者を雇います。私のようにワイナリーの案内をするスタッフは30人ぐらいいます。グループによってはバスごとそれぞれのブドウ畑まで移動し、説明をするケースもありますので、案内のスタッフはしっかりと教育を受けている必要があります。観光客数はナパ・ヴァレー全体で400万人ぐらいですが、ここには年間で40万人くらいの人が訪れます。これは一般の観光客だけの人数なので、ワインメーカーや外国からの大事なお客さんを含めば、もう少し多くなると思います。 ワイナリーでの売り上げは全体の10%ぐらいで、ほとんどのワインは卸業者などを通し、スーパーやワインショップ、レストランなどで売っています。 私達の昨年の年間総売上は4億ドルでした。私達はオープンド・パブリックですので、ブドウ畑からワイナリーまで全てを皆さんにお見せしていますし、私達の情報をインターネット(http://www.robertmondavi.com)で調べることもできます。このようにオープンなワイナリーは'960年代では10ぐらいのワイナリーしかありませんでしたが、'70年代後半では30ぐらいに増え、今では300近くのワイナリーがオープンド・パブリックになっています。中には年間生産量5〜6,000ケースの小さなワイナリーもあります。
 これは古いブドウの受け取り場所です。とても基本的でシンプルなシステムで、ブドウをスクリューポンプで中に移動するものです。後で観ていただく最新のやり方ではタンクまで直接ブドウを持っていきます。ソービニオン・ブランなどの白ブドウはすぐに圧搾機に行きます。'70年代当時は近くに赤ワイン用のタンクルームがあり、すぐに持って行けたのですが、現在ではワイナリーも大きくなっているので、ブドウを潰さないためにこの機械は使わず、直接タンクの近くまで持っていきます。白ワイン用のブドウはすぐに圧搾しますのでこの機械を使いますが、カベルネなどの赤ワイン用のブドウの場合はオーパス・ワンと同じようにタンクの上で破砕し、重力で落とします。  ここはステンレスタンクの部屋で、1966年の創立当時ではとても画期的な新しいシステムでした。フレンチオークで寝かせるということも当時としては新しいことでした。白ワインは、風船に空気を送り込んでプレスするというブーハー圧搾機で静かに潰します。そうして白くて甘い果汁が得られるのですが、シャルドネやソービニオン・ブランの果汁は樽やタンクの中で醗酵します。シャルドネの場合はクリスピーな味を出すために全部樽で醗酵させますが、ソービニオン・ブランの場合は、50%をタンクで醗酵させます。シャルドネの醗酵期間中は1カ月に1度バドナージュという澱とワインをかき混ぜる作業をします。毎月かき混ぜることで、沈殿物が沈みやすくなり、ワインがきれいになるので、濾過をせずにすむようになります。シャルドネは樽で10カ月寝かせます。ワインが痛んでしまうので濾過はせず、数ヶ月ごとに樽から樽に移すという方法で澱引きをし、ワインをきれいにしていきます。酵母は基本的には野生酵母を使いますが、それで醗酵が起きない時にはカリフォルニアで一般的に使われているフランス産酵母のプリース・デ・ムース(EC1118)を使っています。最近ではブドウを育てる時に気を配っていますので、幸いにも加えずにすんでいます。
 赤ワインの場合はブドウと果汁を一緒にタンクに入れます。ピノ・ノワールやジンファンデルなどはマセレーション(かもし)、スキンコンタクトをします。カベルネはポンプ・オーバーをします。このステンレスタンクは20トンです。この後お見せする新しいオークタンクは16トンで、横幅があり背の低いタンクで、コンセントレーションやマセレーションがしやすくなっています。ピノ・ノワールは10カ月、カベルネは20カ月フレンチオークで寝かせます。また、カベルネはマセレーションも長い期間行います。
 醗酵温度は赤も白も78°〜80°F(約26℃)で行います。カベルネはもう少し暖かい方が良いのですが、長期間かもしますので温度が低めなのです。ステンレスタンクからオークタンクに変えた利点の1つは保温性です。その他にも部屋を暖めて、醗酵温度を上げています。醗酵期間は大体8日間で、カベルネ・ソービニオンのリザーブの場合は35〜40日間のマセレーションを行います。年によって違いますが、ピノ・ノワール、メルロー、ジンファンデルなどの赤ワインは8〜9日間でマセレーションを止めています。しかし、カベルネの場合はタンニンを増やすためにマセレーションを長くしています。
 ここにあるタンクはフランスのオークです。3〜4社から買い、2年ぐらい使ってみた結果でどれを使うのか決めました。オークタンクでの醗酵試験では、カベルネに豊かなフレーバーとより深い色を持たすことができました。このオークタンクは背が低く、幅が広いので、とても仕事がしやすくなっています。タンクの底は床から高く、ゲートもタンクの底についていますので、そこからワインやブドウを出すことができます。
 左のオークタンクがタランソー社で、真ん中がコン・ピカード社、右がラドゥー社のものです。タランソーは木も厚く仕事しやすいので、この中ではとても良い商品だと思っています。ですから、新しくできるワイナリーにはタランソーのオークタンクを56樽入れる予定です。
 私達は常に完全なものを目指しているので、このような小さな規模での醗酵試験をし、ブラインドテストなどで最も良いものを使います。ロバートは87歳なのですが、彼のワインへの挑戦はまだ終わっていません。常に彼は前向きで、より良いワインを造ろうと努力しています。
 このボトリングラインは1カ月前に設置された新しいものです。これは3つの機械が1つになっている機械です。最初の部分がリンサーで、次がワインを詰める部分で、そして最後にコルク栓をする部分があります。モノ・ブロックという機械で、窒素の充填、ワインの充填、打栓をこれ1台で行います。ちなみにこの機械はイタリア製です。次の機械はコルクの上にラベルを貼る機械ですが、これはカナダ製です。そして最後の機械はドイツ製で、ラベルを貼る機械です。イタリアとカナダとドイツ、そしてベルトコンベアーはアメリカという国際的なボトリングラインで、全てコンピューターで管理されています。ここではプレミアムワインを年間で40万ケースほど詰めています。
 カリフォルニアの地図を見て下さい。サン・フランシスコの東に行きますとローダイという所があります。ローダイと南のフレスコはカリフォルニアのセントラル地域でいろいろな作物が穫れる所です。私達はナパにおり、ソノマ、サン・フランシスコ、そしてモントレーにかけてはコースタル・リージョンという海岸沿いの地域です。ナパ・ヴァレーでの生産量はカリフォルニア全体の4%です。ほとんどのお客さんはそれを知らずに、ほとんどのブドウがナパで造られていると思っています。ナパ・ヴァレーは南北で25マイル(40キロ)しかありません。ブドウはカリフォルニア全体で造られていますし、ここからサン・フランシスコまでの200マイルの地域では特に多くのブドウが造られています。ソノマも素晴らしいワインの産地なのですが、そのソノマとナパでプレミアムワインが造られています。
 フレンチオークの価格はアメリカでは700ドルです。1人が1つの樽を造るのに4時間かかります。カベルネのリザーブには新樽を使っています。水分のある状態では樽はとても強いのですが、新しい樽の場合は乾燥している状態では木の隙間ができ、漏れやすくなりますので、使う前にお湯を入れて膨らましています。この樽はヌベールというフランスの中央にある森で穫れるオークから造っています。10%がライトトーストで、後はヘビートーストを使用しています。1つの樽は7年間ぐらい使いますが、カベルネのリザーブは新樽だけを使いますので、使った樽をウッドブリッッジの方に回したりもします。
 ここでは10ドルで3種類のワインをテイスティングしていただけます。昨年の3月から有料になったのですが、その分リザーブなどの高品質なワインを試飲できるようになりました。ナパではほとんどのワイナリーが有料になっていますが、私達はお客様にワイナリーを観て、勉強していただいてから、試飲していただいています。
 ソービニオン・ブランはクリスピーで柑橘系の香りがします。フュメ・ブランとの違いは、もう少し酸味と香ばしさを持っていることです。フュメ・ブランはモンダヴィが1966年創立時に初めて造ったワインで、このワインもソービニオン・ブランから造ります。フュメ・ブランは6〜8カ月熟成します。
 シャルドネは100%樽醗酵で、マロラクティック醗酵という2次醗酵をします。リンゴ酸は青リンゴのような香ばしく鋭い酸味なのですが、菌がそれをやわらげてくれます。マロラクティック醗酵によってリンゴ酸がバターのようなまろやかな乳酸に変わります。カベルネやピノ・ノワールも2次醗酵をしますが、ソービニオン・ブランやフュメ・ブランでは行いません。
 このワインは99年のシャルドネで、無濾過のワインです。シャルドネの畑はカーネロスで、ここより涼しく成長期間が長くなります。収穫時期には軽くやさしい果実になり、ワイナリーに入ってくる時も冷たさを保っています。酸味のあるフュメと比べ、もう少しクリーミーな感じで、バターやスモークの香りがあります。樽はライトトーストとヘビートーストの両方を使い、10カ月間熟成します。
 ピノ・ノワールはカーネロスのように涼しいところで育ちます。カベルネと比べると、ピノ・ノワールは軽く、柔らかいワインになります。涼しい朝早くにブドウを収穫し、小さなオークタンクを使い醗酵します。カベルネではポンプ・オーバーをしますが、ピノ・ノワールの場合はパンチ・ダウンというキャップを下に押し戻す作業を行い、色とタンニンを抽出します。ピノ・ノワールはデリケートなので、造り方がとても難しいブドウです。15日間かもして、10カ月間樽で寝かせます。カベルネは40日間かもして、20カ月間樽で寝かせます。
 カベルネのリザーブはオーパス・ワンと同じスタイルのワインで、ブドウの造り方や醸造方法、ワインに対する哲学も同じようにしています。これはロバート・モンダヴィのワインの中で最も良いワインです。20カ月の樽熟成期間中には3カ月ごとに澱引きを行います。最後の澱引きの時に卵白を加えますが、卵白は樽の中に直接入れます。卵白を加えることでワインがよりフルーティーで個性的なものになります。カリフォルニアのカベルネはジャムのように濃厚で、ベリーの豊かなフレーバーを持ち、舌に残る濃厚な味があります。抜栓してから数分間空気と混ざることにでアロマとフレーバーが増し、美味しく飲むことができます。
 ソービニオン・ブランの価格は23ドルぐらい、シャルドネとピノ・ノワールは25〜28ドル、カベルネ・ソービニオンのリザーブは120ドルです。ちなみにオーパス・ワンは、最初は35ドルでしたが、今では140ドルです。
オーパス・ワン
オーパス・ワンは1970年にロバート・モンダヴィとバロン・フィリップ・ド・ロスチャイルドの共同出資で創立されました。出資比率は半々で、2人のワインメーカーと2人のブドウ栽培者、そして2人の経営責任者で、1979年にパートナーシップを結びました。
 1970年から79年までは道の反対側のワイナリーでワインを造っていました。1979年からこの場所にワイナリーを建築しましたが、工費は3,000万ドルもかかりました。ビジョンもファッションも個性的で成功しています。ここで20年間ワインを造っていますが、この建物は美しいだけでなく、とても機能的に造られています。ウィリアム・コレナーのパートナーだったスコット・ジョンソンというデザイナーの設計で、アンティークさとモダンさを持つ優れた建物で、半地下の状態で造られています。ゲストルームには、ロスチャイルド家から持ってきたアンティークがたくさんあります。
 私達は42haの土地を持っています。シャトー・ムートン・ロートシルトは3万ケースぐらい造っていますが、私達も同じく、カベルネ主体のワインを3万ケース造っています。ここはカベルネの産地として最も適しています。私達はカベルネ・ソービニオンとカベルネ・フラン、メルロー、マルベック、プティ・ベルドーの全てをここで栽培しています。
 研究室にはいろいろな測定機器が揃っています。カリフォルニアではテクノロジーとアートの両方が1つになっています。私達は1つのワインを造るのに細心の注意を払っています。1つのテストを3回繰り返し行い、ブドウの収穫時でも朝と夕の2回チェックをしています。
 ここは中2階です。観てわかるように重力を利用した施設になっており、とても丁寧にブドウを扱っています。ここに37個のタンクがあります。全てステンレス・スチールで、温度調節の機能を持っています。228ヘクトリッター(22,8000l)のタンクが31個あり、118ヘクトリッター(11,8000l)の小さなタンクが6個ありあります。私達は違う畑で造られたブドウは、同品種であっても一緒にせず、違うロッドで醗酵します。この白い円盤下には大きなタンクがあるのですが、これは特別な抗菌素材でできています。
 この畑は1エーカーに2,500〜3,000本のブドウの樹が植えられていて、5トンの収穫があります。カリフォルニアの平均からするとこの収量は少ないです。6〜8フィート(1.8〜2.4m)の間隔で、1本の樹から14房のブドウを穫っています。房数を減らすことで、ブドウは小粒で濃縮され、皮も厚くなります。ブドウの樹は年を重ねるほど良く、20年から25年で幅広いストラクチャーを持つようになります。
 この2つの畑は別の方向に植えてあるのですが、左側の南北方向に植えられている畑は1995年の畑で、右側の東西方向に植えられている畑は1992年の畑です。南北方向の畑を扱う方が日照の関係で少し難しくなります。天候や土壌条件によって、考え方が変わってきますので、ブドウ畑の植え方なども変わってきます。ワイン造りではどれが正しく、どれが間違っているということはなく、それぞれのやり方があるのです。
 水は全て井戸から採ったものを使っています。水のある層がとても浅いので、灌水はそれほど必要ではなく、2週間ごとで十分です。ここは粘土質の土壌ですので、水捌けはあまり良くありません。
 収穫は自然の条件により左右されますので、ブドウ畑の労働者はその時々で必要に応じて呼びます。もちろん年間を通してブドウ畑で働く人もいます。昨年の収穫の期間は50日間でしたが、その日ごとに8人から10人ぐらいの労働者のグループがきます。その日の収穫量が多い時にはそれだけ多くの人を呼びます。収穫に適した果実しか収穫しませんので、1つの畑を何日にも渡って収穫します。
 オーパス・ワンには畑だけの労働者はいませんので、収穫時期にはロバート・モンダヴィの畑で働いている人を使います。ですから彼らはある時はここで働き、ある時は向こうで働くわけです。ワイナリーでは35人の従業員がいます。その内、10人がセラーで働き、収穫時期にはさらに12人が加わります。この建物は少人数で機能的に働けるように設計されており、集中して質の高い仕事をすることができます。技術のある人をたくさん雇いすぎると、意見が衝突して仕事が巧くはかどりません。それがオーパス・ワンの考え方で、少人数で質の高い仕事をしています。
 オーパス・ワンはワイン造りに関してもフィフティー:フィフティーで、カリフォルニアの最新のスタイルを採りつつも、そこにフランスの伝統的なスタイルを取り入れています。全ての物事を話し合いで解決し、全員が納得するまで討論を続けます。
 ブドウは痛まないように手で摘み、収穫箱に入れます。それをパレットに積み、エレベーターで運び込みます。これはバイブレーティング・テーブルという機械ですが、ブドウを乗せると振動し、ブドウが全て平に並びます。悪いブドウを選別し、手で取り除きます。残った完全なブドウだけがベルトコンベアーで運ばれ、ホッパーに落ちていきます。2つのゴムのローラーで種を潰さないように軽く潰し、ブドウの梗を取り除き、重力で下のタンクに落とし込みます。これらの機械には車輪がついていて、次のタンクの上まで移動させることができます。
 8時間ごとにポンプ・オーバーをしますが、ポンプはモンディーニ・ポンプというイタリア製のピストン・ポンプを使っています。糖分がなくなるまで醗酵させ、およそ7〜9日間で醗酵が終わります。
 私達は酸と糖分が最も適した時に収穫し、補酸や除酸はしないようにしています。カリフォルニアは気候条件がブドウに適しているため、糖も酸もとてもいい状態で収穫できるのです。亜硫酸はとても必要なもので、破砕時に加えます。ブドウにとって完璧な天候ですので、余計なものを加える必要がありませんが、酵母だけは足りない時に加えることがあります。
 ナパ・ヴァレーは3月から11月にかけてはほとんど雨が降らず、しかもカリフォルニアには素晴らしい技術がありますので、ヨーロッパのように良い年と悪い年の差がなく、年々より良いワインを造ることができます。ですから値段も上がっていきます。1984年に最初のオーパス・ワンが売られた時は1本50ドルでしたが、当時としては高価でとても珍しいことでした。
 タンクは全てステンレスタンクで、重力を利用したシステムになっています。バロン・フィリップはブドウをやさしく扱えるようなシステムを要求しました。
 8時間ごとにポンプ・オーバーをします。酵母はプリース・デ・ムース(EC1118)というシャンパーニュの酵母を使います。とても醗酵力が強い酵母で、醗酵温度は30℃まで上がります。醗酵が終わると、30日から40日間のマセレーションをします。マセレーションの間はカーテンで仕切り、ヒーターで88≠e(32℃)まで暖めます。ポンプ・オーバーとマセレーションという独特な技術により、ワインは柔らかいタンニンを持ち、消費者を楽しませるワインに近づいていきます。マセレーションが終わると重力でフリーランのワインを取り出します。セラーには美しい樽が1, 000樽あります。フリーランワインは樽に入り、3カ月後にはブレンドされます。ロッドごとに完全に分けて造ります。昨年はいくつかのタンクで野生酵母での醗酵を行いました。それぞれのタンクで違ったものができます。
 フリーランを抜いた後、タンクに残ったもろみはスペイン製のバスケット型プレス機に入れます。もろみは2時間かけて、3段階の圧力でプレスします。これをプレスワインといいますが、3カ月後にはフリーランワインとブレンドします。プレスワインワインはワイン全体の1〜5%です。ブレンド後も15ヶ月間樽で熟成し、瓶詰め後も2年間寝かせます。毎年10月1日に販売を始めます。ですから今年の10月には97年のヴィンテージを発売するわけです。全ての作業日程が決まっています。
 セラーは半地下にあり、半円形の美しい形で1,000個の樽があります。並べ方も芸術的に行い、作業中にワインが垂れても汚くならないように、真ん中の部分をワインの澱で塗ります。毎年新しい樽を使います。ここには2000年のワインが入っており、'99年のワインは別のセラーで寝かせています。
 始めの数週間はガラス製の栓を使います。マロラクティック醗酵が終わるとシリコン栓を使います。ワインは減っていきますので、2〜3週間に1度亜硫酸と一緒にワインの注ぎ足しをします。3カ月ごとにラッキング(澱引き)をします。樽から樽にサイフォンを利用して移しますので、1,000樽行うのに1カ月かかります。4回目と5回目のラッキングの間に1度だけ卵白を使います。
 セラーの湿度は88%で、霧を噴射して保ちます。温度は12℃ですが、エア・コンディショナーはなく、8kmの長さのパイプに冷水を流して温度を調節しています。これはとても静かで振動もありません。湿度が高いのでワインの欠減は少なく、3%ぐらいです。樽の先端の部分には栗の木を使用していますが、虫は樫よりも栗の部分を先に食べますので、樽が傷つく前に何が起こっているかわかります。樽職人をこちらに招待し、ブラインドテストに従って注文します。ミディアム・トーストなのですが、オーパス・トーストというオーパス・ワン独特な方法で最新の注意を払って造らせます。
 オーパス・ワン'97はカベルネ・ソービニオンが82%、カベルネ・フランが8%、メルローが5%、マルベックが4%、プティ・ベルドーが1%です。18カ月樽で寝かせ、2年間ビン熟成をします。まだ若いワインですが、とても美味しいワインです。
 このラベルは左にいるのがロバート・モンダヴィで、右がバロン・フィリップです。バロン・フィリップは貴族ですので、少し上の方にあります。しかし、ロバート・モンダヴィのサインは左側、すなわち最初の方にありますので、平等になっているのです。
ペジュー・プロヴァンス
 オーナーのペジューさんはブドウ造りからワイン造りが始まると考えていますので、このブドウ畑から案内させていただきます。始めにこのワイナリーの背景をお話ししますが、私達はとても小規模な家族経営のワイナリーです。年間12,0000ケケーースを生産し、ブドウはこの辺りの30エーカーから穫っています。今まさに大きくなろうとしているところですので、私達の歴史の中でも素晴らしい時です。4年前にペジュー夫妻はここから15マイル西に350エーカーの土地を手に入れ、その半分にブドウを植えました。それが今の基準となり、2000年のワインになるわけです。ワイナリーも増築中で、それも後で観ていただけると思います。新しいテイスティングルームも造りました。
 ワイナリーの前に庭がありますが、ペジュー氏はワインと美しい芸術のハーモニーは素晴らしいと強く信じています。ガーデンは来ていただいたお客様を歓迎し、リラックスしていただき、楽しんでいただくという雰囲気を造ります。
 今ではここにタンクが置いてありますが、以前は破砕をする場所でした。ここにブドウが入ってきて、破砕や圧搾をし、ポンプでワイナリーの中に送っていました。この新しいワイナリーは3分の1がタンクルームで、3分の1が樽貯蔵庫、3分の1がビン貯蔵庫です。小さい建物にはオフィスとテイスティングルームがあります。製造過程で使うのはとても狭いスペースです。今までは12,000ケースを造っていましたが、4年から5年後には50,000ケースになります。そのために私達は増築しています。
 ここはタンクルームで外にあるタンクは全てここに置きます。その奥には樽貯蔵庫になる予定です。私達はボトリングラインを持っていませんでした。ボトリングラインのメンテナンスはとても難しいので、いくつかの大きなワイナリーでもそうなのですが、ほとんどの小さなワイナリーでは外注でビン詰めをしています。私達はトラックでボトリングラインを運んできてもらい、瓶詰めをします。大きなビン詰め屋は3つか4つしかありませんので、スケジュールを合わせるのは大変です。今年は無理かも知れませんが、来年からは自分達のボトリングラインでビン詰めをしたいと思っています。上のフロアはオフィスになり、その奥はワインライブラリーになります。
 ペジュー氏の家系はアルバニアの出身で、確かペジュージアンだったと思います。彼の父はフランスのプロヴァンスに移住し、その時に名前をペジューと名乗りました。ペジュー氏はフランスで育ち、20代後半でカリフォルニアのロス・アンゼルスに移住しました。このワイナリーはペジュー・プロヴァンスと言いますが、それは彼が育ったプロヴァンスに由来しています。
 ガーデンにある彫刻のいくつかはギリシャ神話に基づいています。先ほどもお話ししたとおり、ガーデンを観ていただくことでリラックスしていただけます。今は冬なので想像が必要ですが、暖かくなると薔薇などの色々な花が咲きます。
 現在私達は8〜9種類のワインを造っています。新しい畑ではもう少し種類を増やし、シラーやジンファンデル、ソービニオン・ブランを造ります。また、ボルドー品種のプティ・ベルドーやマルベックも造る予定です。私達は量だけではなく、種類も増やします。幅広い価格帯で幅広い種類のワインを造ることで、より多くの人に満足していただくというのが私達の考えです。
 最初のワインはナパ・ヴァレー・シャルドネ1999年です。私達は2つの違う種類のシャルドネを造っていますが、これは軽いクリスパー・スタイルのワインです。ステンレスタンクで低温醗酵させます。1次醗酵だけで、マロラクティック醗酵はしません。フランスのスタイルに近いワインで、リンゴやナシのようなクラシックなフレーバーがあります。カリフォルニアのスタイルとは違い、オーク香はありません。酸味が強いクリスピーなワインですので、食事によく合います。
 次のワインはここで造っている独特なワインで、カルチュアリー・ブレンドというワインです。赤が3種類、白が1種類入っています。カベルネ・ソービニオン、カベルネ・フラン、メルローが赤で、白のフレンチ・コロンバートも45%入っています。ライトボディーで、赤ですが冷やして飲みます。単純にトロピカルな味がし、考えて飲む必要のない単なる飲み物というワインです。ピクニックやバーベキューなどで気軽に飲めるワインです。これは人気のあるワインの1つですが、気軽さが良いのかも知れません。よくワインを飲む人でもあまり飲まない人でも、誰にでも楽しんでいただけるワインです。
 次は1998年のカベルネ・ソービニオンです。このワインはまだ若く、8月にビン詰めしたばかりなので、5カ月しか経っていません。ワインメーカーとしてはあと半年ぐらいは出したくないのですが、97年のワインを売り切ってしまったので、98年を売っています。これはもうすでに今飲んでも良いワインで、これからさらに熟成します。これは素晴らしい軽いチェリーの果実味があり、軽い酸味があります。最も素晴らしいのはタンニンが柔らかく、まろやかであるということです。1日の終わりに何かを飲もうという時には、私はこのワインを選びます。このワインは38ドルです。
 最後は1997年のメルローです。本当ならばカベルネよりも先に飲んでいただくのですが、メルローの方が97年で古いので、より複雑さを持っています。普通のメルローと違い、柔らかく軽いワインです。その代わり豊かでいろんな特徴を持っています。97年はとてもブドウを造るのに良い年でした。毎年97年のような天候であれば、とてもいいブドウができ、非常に果実味のあるワインができます。口の中にゴージャスで熟した美味しい果実の味があります。普通のメルローでは余韻がなく、飲んでしまえばその味は終わってしまうのですが、このメルローは余韻がいつまでも残ります。そのフレーバーの余韻はとても面白く、土や埃のような複雑なフレーバーがあり、熟した果実の味がします。メルローは樽で14カ月熟成します。カベルネは17〜18カ月です。
 1週間に平均で600人のお客さんが訪れます。ですから年間30,000人ぐらいの人々が訪れます。8月から11月にかけては、平日で100人、週末では400人が訪れます。この時期は週末でも200人です。先週から始まったマスタード・フェスティバルが来月までありますので、天気が良くなればお客さんも増えると思います。また、テイスティングルームが完成すると5階建てくらいの高さになりますので、道路からも目立つと思います。ここでの売り上げは全体の95%です。