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主に平地あるいは丘陵地帯に住むネパールの人々の一般的な食事は、タルカリ・ダル・バートが基本である。タルカリとは野菜のこと、ジャガイモ、ナス、カリフラワー、トマト、タマネギなどの炒め物である。普通には タルカリカレーと言っているようであるが、日本でいうカレー料理の概念とはまったく異なっている。日本では野菜などを味噌とか醤油、塩などで味付けをするが、ネパールでは油で炒めたものを主としてトウガラシ、ターメリックと塩で味付けして蒸し煮したものである。主としてというのは、香り付けのスパイスは家庭にもよるが、庶民の家ではあまり使わない。香り付けのスパイスを使うのは金持ちとか料理にうるさい主婦である。山地ではターメリックも使わない場合が多いようである。
その他野菜料理で ハリヨサグと言うのがあるが、ハリヨとは緑、サグは野菜、つまり、ホウレンソウなどの緑の野菜の炒め物のことである。簡単なのでこれもたいていの料理に出てくる。味付けは単純には、クルサニ(トウガラシ)と塩だけだが、メティ(フェヌグリーク)を使うとよい香りになる。
ダル(スープ)とは、ダル豆のスープのことであるが、日本では生産していない。黄色いもの、ピンクのもの、黒い皮付きのもの、いろいろな種類があるが、黄色いダルが一番使いやすいようである。ダル豆は強いて言えば、アズキとかササゲの類いで、大豆の仲間とは違うようである。そのダルを軟らかくなるまで煮て(圧力鍋を使うと時間もかからず、燃料の節約になる)、塩、油(マスタードオイル)、ニンニクやスパイスなどで味付けしたものである。(ダルスープをアズキで作ったらどうなるか挑戦したお嬢さんの話だとおいしくなかったそうである。日本に在住しているネパール人も試みたそうである。)これは日本でいえば味噌汁に相当する重要な植物タンパクである。これも、家庭によって濃さが違うし、味付けも異なっている。これをスープのようにも飲むが、ご飯にかけて食べることが多いようである。
バート とはご飯のこと、もちろんインディカ米であり、日本の米と比べるとバラバラしているが、カレー料理には不思議と良く合っている。
それに何かの漬物(アチャール)がついている。アチャールの種類は土地や季節によっても異なっている。極辛のクルサニ(トウガラシ)のアチャール、マンゴーのアチャール、トマトアチャール、土地によってはバンブー・アチャール、いずれも辛くて酸っぱい。単なる塩漬けではなく、ニンニク、ショウガ、クルサニ、マスタードシード、ジラ、レモンなどを使い、マスタードオイルなどで漬けて発酵させてあるのが特徴である。アチャールと称するものは、ピクルスのような漬物、即席の漬物というよりは和え物、ジャム状の煮物で甘く辛く酸っぱい味、いろいろなものの総称のようである。インドではチャツネとアチャールを区別しているが、ネパールでは一緒にしているようである。